結果発表

2025年9月25日からバンコク・セントラルチットロム2階特設会場で開催されていたCENRETAアートアワードの展覧会が、10月12日に幕を閉じました。そして、10月8日に実施された最終審査会によって受賞者が決定しました。

総計400点もの応募作品から一次審査を経て選ばれた47点のファイナリスト作品が、最終審査の舞台で展示されました。

今年の募集テーマ「EXCHANGE」に基づき、テーマ解釈の深さと独自性、メッセージ性、技術力などを審査基準として厳正に評価が行われました。

審査は、国籍や氏名を公開せず、純粋に作品そのものを見つめる形で行われ、非常に高いレベルの競争を経て以下の3作品が受賞しました。

最終審査結果

最優秀賞

「AI's Silent Omissions」(日本)窪田望さん

映像作品「AIの消え去る声」は、裂手症という手指の先天的差異をテーマに、AIによる「正常」と「異常」の分類がもたらす見えない暴力を浮かび上がらせる。AIが生成した「五本指ではない手」の画像は多くの場合ノイズや欠陥として排除されるが、その背後には実際に生きる当事者や家族の現実がある。本作では裂手症の当事者や関係者へのインタビューを通じ、その声を丁寧に拾い上げる一方で、AIによるフィルタリングや検閲がいかにしてマイノリティを「消去」していくのかを批評的に示す。鑑賞者は、技術の進歩の影に消されてしまう声の存在に気づき、正常とは何か、排除されるものの価値とは何かを問い直すことを迫られる。

優秀賞

「街を泳ぐ魚 "A Fish" Out of Water」(日本)岡本真実さん

「声が出せなくても、私は人と関わりあうことができるのだろうか?」この問いは、私が10代で経験した発声障害という個人的な葛藤から生まれたものです。本作は、その経験を出発点としつつも、誰もが感じうる「他者と関わる不自由さ」に焦点を当て直し、対話の可能性を探る実験です。作品の軸をなすのは、3Dモデリングとデジタル合成技術で制作した一着の魚の着ぐるみです。私はこの着ぐるみとともに多文化が交錯するインドネシアの街へ介入しました。今回選んだこの写真は、路地裏で出会った子供たちに「Di mana?(どこへ?)」と問われた瞬間です。私はインドネシア語を話せず、彼らも日本語を話せませんでしたが、確かなコミュニケーションが生まれていました。EXCHANGEは、交換の意を持ちます。この着ぐるみは異分子の象徴であり、同時に他者化して排除する眼差しの危うさを問う装置として機能しています。魚眼カメラに映った人々の反応は、文化の壁を越えていかに感情の交換が発生しうるかを示唆します。この活動は、対話の始まりに過ぎません。これからもこの探求を続け、対話のあり方そのものを提示していきたいと考えています。

審査員推薦作品

「アニメレシート:合羽橋録 Animated Receipt: Recorded in Kappabashi」(タイ)Lily Ongaさん

本作は、東京・合羽橋の料理道具店の記憶を、各店が発行するレシートを通して記録している。家族経営の店舗では、表面上は混沌として見える陳列にも、独自の秩序と意味があり、レシート上の表形式と奇妙に呼応している。各セルには、店の裏側の仕組みや代々続く家族経営の歴史が込められ、都市から失われつつある小売文化の一端を映し出す。巨大なコック像、食品サンプル、大小さまざまな鍋が積み上げられた風景は、一見混沌としていながらも整理されており、そこに隠れたシステムと創造性が感じられる。レシートという日常のツールを介して、この街で見た世界と体験を再現し、観察者にその秩序と楽しさを伝えることを目指している。

ファイナリスト作品名一覧

展示風景

Exhibition 0
Exhibition 1
Exhibition 2
Exhibition 3
Exhibition 4
Exhibition 5
Exhibition 6
Exhibition 7
Exhibition 8
Exhibition 9
Exhibition 10
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Exhibition 12
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Exhibition 16

今後の予定

本アワードでファイナリストとして選ばれた日本とタイの作品は、2026年度に日本国内の大丸松坂屋百貨店で展示される予定です。
詳細については、決まり次第改めて公式ウェブサイト等を通じてご案内いたします。

主催者からのメッセージ

応募いただいた全ての方々、そして展覧会を訪れてくださった皆様に、心より感謝申し上げます。CENRETAアートアワードは「文化交流」と「国際的視野の共有」を目的としたイベントであり、これからもさらなる発展に向けて努力してまいります。皆さまのご支援を賜りながら、次世代のアーティストとともに新たな地平を切り開いていければ幸いです。

展覧会を通じて感じた「EXCHANGE」の可能性が、未来の文化と創造を支え続ける基盤となることでしょう。また次回のCENRETAアートアワードで皆様と再びお会いできることを楽しみにしております!